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予習と復習

「予習と復習をやる際に、どっちに力を入れればいいのでしょう?」

こんな質問が先日掲示板に寄せられました。結構いろいろとレスがついたので,それに関してまとめてみようかなと思います。

1. まずは一般論 〜普段は予習。まとまった復習はテスト前に〜

普段の学習は予習を中心に据えるべきです。そして授業でしっかりと自分の頭に叩き込んで,その日のうちに(教科書・ノート・プリントを見直す程度の)復習をして記憶の定着を図ります。当然,さらに復習が必要となるわけですから,それを定期テスト前に行います。

予習が必要な理由は,今さら書くまでも無いと思いますが,「自分が分からないところ(=授業において自分がしっかり聞いておかないといけないところ)を把握する」「そのことによって,授業での記憶定着の効率を上げる」ということでしょう。

例えば,授業で演習を行う段階にあるときのことを考えてみます(高3のときとか,予備校とか)。明日は数学の授業。A,B,Cの3つの問題を明日の授業でやることになっているとしましょう。とりあえず家に帰って,問題に取り掛かってみた。Aの問題は何の苦労も無く,ほんの10分くらいで解けてしまった。Bの問題は何となく解けそうな気がしたけれども,いざ取り掛かってみると案外難しくて,ゴジャゴジャ30分くらいややこしい式変形をしているとなんとか解けた。Cの問題は,どこから手をつけていったらいいのかサッパリ分からない。こうやって予習をした段階で,少なくとも「明日の授業でどの問題を重点的に聞けばよいのか分かった」ということになります。この場合はもちろん,BとCの問題ですね(Bの問題は,とりあえず計算をやったら解けたという例ですが,こういった場合は大抵裏に素晴らしい解法が隠されています)。

そして,いざ授業。Aの問題の解説のときは,(B,Cと比べると)それほど集中して聞く必要はありません。既に自分で最適な解法を身につけていると思われるからです。むしろ,ここで授業を聞くことによって,授業自体が復習となります。(もちろん,別解などが紹介されたときは,それも確実に自分のものにしておきましょう。)

Bの問題。いろいろと式変形をしてみたら,莫大な計算の後に解けたという問題ですが,恐らく授業ではそれとは違う解法が紹介されることでしょう。予習の段階では気付かなかった,どのような着目の仕方をすればよかったのか,これが授業で聞くべきところです。

Cの問題は,サッパリ分からなかった問題ということなので,じっくり先生の説明を聞いて見ます。これも,Bと同じように,予習した時にどのようなことがまずかったのか。これを中心に聞くことにします。

ともかく,こうやって「聞くべきところ,聞かなくてもいいところ」を分けることによって,集中力も増加して,記憶の定着もよくなります。また,すでに予習の段階で分かっていたところは,授業を聞くことによってそれ自体が復習となるのです。(科目ごとの予習や復習については,後ほど述べます)

さて,次に復習について書いてみましょう。私が必要と思っている復習は2つあります。

  1. 授業を受けたその日のうちの復習
  2. 定期テスト前の勉強を兼ねた復習

まずは1の「授業を受けたその日のうちの復習」。これはサクッサクッと軽くこなしておくだけでよいでしょう。上の数学の例でしたら,Aの問題は授業中に復習したことになっているのでサラッと10秒ほど問題を眺めるくらいでいいでしょう。BやCの問題は,実際に鉛筆を動かして解いてみるのですが,予習で苦労した上に授業中に解法を学んだはずなので,あっけなく解けるはずです(というか,ここで解けなかったら,それは授業を聞いていないということと同値です)。とりあえず,この日はこれでおしまい。他の勉強とか予習とかに時間を回しましょう。

次に,2の「定期テスト前の勉強を兼ねた復習」。すでに2度以上頭に入れたことでも,いろいろと忘れていることがあるはず。それをここでじっくりと頭に叩き込んでおきたいものです。授業のノートを見直す,問題集をもう一度解いてみる,など。「何を聞かれてもテストでは答える自信がある!」という段階まで,授業でやった内容を習熟させましょう。

もちろん,この段階まで習熟させるには,それなりの時間がかかると思います。1個学期につき2回の試験があるようなところでしたら,試験の2週間くらい前から対策を始めていくのが目安でしょうか。また,どうしても時間が足りない,という場合。こういったときは,多少の理屈は抜きにして丸暗記してしまいます。よく丸暗記を悪く言う人がいますが,それには以下のようにして反論できます。定期テストで扱うような内容は,受験勉強の仮定で再び登場する。その際に問題を解くことによって,丸暗記したことの意味も分かるのではないか。

予習・復習とも,大切なことであるのに違いはありません。復習は記憶を定着させるためには必要不可欠ですし,予習は授業や復習の効率をあげる役割を持っています。そして,復習は誰しもがテスト前にやることですので,私はいつも予習の大切さについて説明している,というわけです。次の節では,科目ごとに予習・復習について考えてみたいと思います。

エビングハウスの忘却曲線
(補足)忘却曲線について
心理学や勉強法の本などで,忘却曲線というものを見たことのある方は多いことでしょう。あれはエビングハウスという研究者が,無意味つづり(dog,catなどではなく,zat,bok,sidなどの,意味を持たない音節)を用いて実験したものです。しかし,だからといってこれが受験に当てはまらないというわけではありません。実際には,意味のあることでもこの忘却曲線と同じようなカーブを描くことが確かめられています。 赤線は,何も復習を行わなかったときの,青線は記憶してから半日後の,それぞれの記憶の量を示しています。これからも分かるように,やったその日のうちに復習しておくと記憶がよく残ることになります。

2. 教科別予習・復習

そろそろキーボード打つのがだるくなってきたんで(笑),掲示板からのコピペも使います。(Thanx to よっしー坊)

英語:予習=復習

英文解釈と英作文は予習必要と思う 英文の読み込みした方がいいと思うんで復習もぬかりなく。

というか,リスニングの授業以外では全て予習が必要だと思います。オススメの予習の方法としては,

リーダーや長文の授業の場合
教科書の英文をコピーしたものを用意しておくと便利です。
(1)とりあえず,試験を受けていると仮定して,辞書を使わずに本文を読む。
(2)その際,分からなかった単語をラインマーカーでチェック。
(3)問題があればそれを解いてみる。
(4)分からなかった単語を辞書で引いておく。
……最低限ここまでは必要ですかね。余裕があれば全訳してもいいですし,単語を紙にまとめたりしてもいいですけれども。英文解釈(≒和訳)とかの授業だったら,全訳をしておきましょう。
文法の授業の場合
(1)とりあえず問題を解いてみる。以下,解答が配布されているときは,
(2)間違えた問題は,後で見直した時に区別できるように,×印でもつけておく。
(3)(余裕があれば,間違えた問題を中心に)文法書の該当する項目をチェックする。
……文法問題は,やった問題の1つ1つをキチッと押さえていけば,すぐにコツが分かるようになります(ヒッカケの選択肢とかがすぐに分かるようになります)。
英作文の授業の場合
(1)辞書を使わないで,現在自分が持っている英語の力だけで英訳をする。辞書をひいてはいけない。構文に注意すること。
(2)どうしてもどうしても分からなかった箇所のみ,辞書を引いてみる。思いも寄らぬ表現とかは要チェック。
……どんなに難しい表現でも,簡単に表現する方法があるはず。これを考え出すのが英作文の力の一つ。模範解答に載っていなくても,先生に見てもらうと案外オッケーだったりする。

復習は,次のようにやるといいかも。

リーダー・長文
やっぱり文章は数回読み返しましょう。授業の直後に1回読むと効果覿面(てきめん)。その後,まあ定期テスト対策として何回も読み込みます。理想は全文暗記。別に日本語を考えなくても,英語が自然にスッと出てくるようになればいいんじゃないかと。
文法
扱われた文章を一通り読んで,覚えようとしてみる(覚えるのが大切なのではなく,覚えようという意識をもって文章を読むことが大切)。
英作文
同上。模範解答と,自分で作った答案を添削したもの,両方やるとなお良い。

数学:予習=復習

予習で思考する習慣をつける。 復習で解法をものにする。

これは問題演習のときにあてはまることですね。まずはそちらについて説明。

まずは,入試というシチュエーションを考えてみましょう。そこで全く見ず知らずの問題に出会ったとき,あなたはどうするでしょうか?……もちろん,解法を見つけようと,式を変形してみたり,絵を書いてみたり,いろいろともがいてみることでしょう。

このもがいているときこそ,普段の問題演習でどれだけ頑張ったかが問われるのだと私は考えます。例えばスポーツでも,「本番で苦しくなったときこそ,練習のときにどれだけ苦労したかが問われる」でしょう。それと同じことを数学でもやる,そう考えてください。問題の解決の糸口が分からなかったとしても,絵を書いてみたりする訓練を繰り返していれば,本番でもそれがきっかけで思わぬ糸口を見つけることとなるでしょう。これが「思考する習慣をつける」ということです。これさえ出来ていれば,多少の「解法ストック」の差くらいは余裕でカバーできます。

普通に教科書を進めて行くという段階のときは,予習は特に要らないんじゃないかと思います。復習として,授業でやったところと対応する問題を解いていけばいいんじゃないでしょうか。

理科:予習<<復習

復習に力入れる方がいいような気がする(経験上)

はげしく同意です(笑)。

化学

予習は要りません(問題演習の授業のときは,当然解かなければいけませんが)。復習として,授業でやったところを対応する問題を解いてみる。そして,化学・有機反応のまとめ方に書いたようなやり方で,登場した事項をまとめてみるといいんじゃないでしょうか。授業や問題集では「ばらばら」で登場した知識を,自分の手を使うことで再構築することによって,いろんな問題に対応する力もつくはずです。

生物

これも予習は要りません(問題演習のときは同上)。絵を書いて覚えましょう。ゴロ合わせで覚えましょう。写真を見て覚えましょう。問題を解いて覚えましょう。

国語

掲示板に書いてあったのはここまで。あとは国語くらいですかね……

古文・漢文は,1・2年のうちは予習をある程度はしておかないとかなり厳しいでしょう(文法事項などがまだ頭の中に入っていないでしょうから)。慣れないうちは,品詞分解や書き下し文だけでもやっておくべきです。古文なんかじゃあ単語は軽視されがちですが,実は英語以上に単語力が大切な科目だったりもするのです。例えば「あはれなり」など,現代と昔では言葉が同じでも意味が違うという単語がありますよね。そういったところを中心に単語は調べておくといいでしょう。漢文などでは,白文を見て書き下し文が書けるようにしておくことが大切でしょう。

地理

地理? うーん……予習は不要。復習で,白地図にいろいろと書き込んでいってください。授業で登場したことをまとめていくと,頭の中も整理されます。

3. 実際のノートはどうなるか・・・

例えばリーダーの授業では,授業が終わった後はこんな感じのプリント(約65KB)が出来上がります。ラインマーカーが引いてあるところが,予習で分からなかった単語で,あとはいろんなことを赤・緑・紫のペンで書き込んでいます。

もう一つ。古文なんかは,こんな感じのノート(約65KB)。本文を写して,助動詞とか和訳とかを書き込んでいきます。

英語と古文をここで挙げましたが,基本的には「見直せば定期テストで満点が取れる」というノートを目標にしていればいいのではないでしょうか。