一般に合格体験記というものはあまり頼りにならないものだ。何故ならば、合格したものは、自分のやったことを歪曲して書くからだ。自分がほとんど使わなかった難しい参考書を「これをやったから合格した!」などと書いたり、逆に「夏はほとんど勉強できなかったが集中力(これを自慢したいだけである)で乗り切った!」などとと書いたり…。しかし、これは仕方のないことでもあろう。何しろ合格して嬉しいのだから、あとは自慢するだけなのだ。
こんな体験記を参考にして勉強計画を立てても、参考書にかける金が余分にかかるか、もしくはカラ元気が出てくるだけである。情報の取捨選択が出来ない人はむしろ読まないほうが良いかもしれない。これから私は体験記を書いていくことになるわけだが、二つ留意してほしいことがある。一つは、私の書くものも結局は例にあげたものと同じように、ただの自慢話になる可能性があるということ。もう一つは、私のやったことが万人に通用するかどうかは分からないということだ。このことを頭に入れた上で読み進めてほしいと思う。
私の出身中学校は、聞くところによれば神戸市の80余りある市立中学校の中で、下から片手で数えられるほどの学力の中学校だったらしい。その中で私は定期テストでは常にトップに君臨していたわけだが(少し自慢)、県立の中でトップと言われる進学校に入った最初のころは、偏差値は約50、つまり真ん中にいたということだ。しかし、1年の2学期くらいにはすでに上から両手両足で数えられるくらいの順位にはいたし、そこから卒業まで自分の順位が大きく変動することはなかった。つまり、この最初のころにやっていたことが、高校の中でいい順位を占めていた、最終的には大学に合格した要因となってくると考えられる。
で、その「していたこと」とは何か。授業の予習くらいしか私はやっていなかった(ちなみに私は授業をまじめに聞くことは受験以前の問題だと思っているので)。「しか」とあっさり書いたが、この予習毎日続けるのはとても大変なことであるが、かつとても重要なことであると私は考えている。実際私がこうやって合格しているわけだし、逆に超有名な私立中高一貫校に通っても予習や復習をしなかったため、それをひきずって結局は東大に落ちたという人は掃いて捨てるほどいるだろう。これをしたから合格する、というわけでもないが、やっていれば大きな力となることであろう。
英語に関してだけ言えば、1年のときは、はっきり言って異常とも言えるほど予習をしていた。教科書の英文をワープロで打ち込み、それをルーズリーフに印刷してから、単語の意味、発音を調べて、最後に全文訳をしていた。はっきり言ってこれは今から見るとやりすぎであったが、何もしないよりはずっとよかったと思っている。ちなみに2年は、教科書の全文訳と分からない単語の意味調べだけにとどめていた。3年ともなると、問題を解いて、分からない単語を調べるだけであった。
では、何故予習をするといいのだろうか。大きな理由は、「授業を理解しやすくなる」ということであろう。授業でやったことがそのまま入試に出題されることはそう多くないが、そういう問題でも授業でやったことを足場として考えるような問題であることが多い。授業の理解無くして入試問題は解けない、というのが私の考えである。そのためにもやはり予習・復習は大きな武器であろう。もちろん、1年のときからやるのだよ…。
ちなみに、復習に関して言えば、定期テストの勉強が授業の復習になっているということだ。自分が授業をどの程度理解したかが分かり、しかもテストで点数を取る手段となる、これをしない手はなかろう。
長々と書いてきたが、結局は「授業理解の上に入試問題がある。そのために日頃の予習・復習を大切にしよう」というだけのことである。千里の道も一歩から、とはまさにこのことである。
授業の理解をした後は、何をしたらいいのであろうか。その前に一つ確認しておきたいことがある。受験勉強とは、入試までに何をやったから合格する、というものではなくて、入試本番で問題さえ解ければ合格するものである。だから、別に勉強しなくても合格する人は合格するし、勉強しても不合格になる人もいる。これは極端な言い方だったかもしれないが、勉強法でいうなら、ある特定の勉強をしないとある大学に合格しないというわけでもない。他人の合格体験記を読んだあとは、それを真似してみるのではなく、それを参考にして自分なら何をやればいいかを考えることが大切であろう。
私の場合は、学校の授業以外は、進研ゼミが中心となっていた。実は進研ゼミをやっていたのはただの惰性(小3の頃からやっていた)なのだが…。それはともかく、進研ゼミの目的は、問題演習にあった。だから、別にそれではなくても、市販の問題集とかZ会とかで十分に代用はできたと思っている。実際に問題を解いてみることによって、基礎的な知識の穴が分かるし、それ以降の問題を解く「コツ」というものも分かってくる。
問題を解いたあとは必ず答えあわせをする必要がある。そして、間違えたところは、解説を読んでもかまわないし、自分で参考書などを調べて理解できれば別にそれでもいいだろう。私の場合は、まず自分の頭で考え直してみて、分からなかったら参考書で調べる、そして、分かろうがそうでなかろうが、最後には解説を読む、という風にした。これはただ自分にこの方法が合っていたというだけのことで、万人に合うものではないと再確認しておく。
過去問は、あまり解いていない。せいぜい3年分くらいだろうか。やろうとは思ってはいたのだが、夏期講習・冬期講習やいろいろな問題集で解いたことのある問題はあるし、傾向をつかむなら計6回の東大模試でできるだろうと思ったからだ。しかし、実際に大学がどんな問題を出してくるかはやはり過去問を解かないことには分からないわけだし、あまり解かなかったのがよいのかどうかは判断しかねる。
他には、「隙間時間を最大限に活用する」ことをオススメしたい。私の場合、通学時間は1時間15分くらいだったが、そのうち50分くらいは電車やバスの中だった。その時間にも少しずつではあるが勉強をしていた。通学中は大したことが出来ないので、DUOや即ゼミといった気軽に出来るものを中心にやった。また、授業の予習が終わっていなかったときも通学途中にやっていた。
今から考えると、この「通学勉強」はとても大きな効果があったかもしれない。電車やバスの中では他に何もすることが無いわけだから、勉強には集中できる環境である。それが私の場合1日1時間半もあったのだから、3年間あるとその量は莫大である。机の上で勉強できない人は是非実行してみて欲しい。
1年のときから予習を欠かすことだけはなかった。予習を完璧にしようと思った頃もあったが、さすがにそれは無理だった。少しずつでもいいから毎回予習をしてから授業に望むことが大切であろう。2年の後半からは授業に問題演習が入った。私の場合は、まずは問題を解く、その際分からない単語があったらマーカーでチェックして、辞書では調べないで問題を解いてみる。つまり、分からない単語に出会ったときの練習をしていたわけだ。実際の入試で分からない単語に出会わないはずはないのだから、この練習は日頃からやる必要があると思う。そして、さすがに問題演習では全文訳はしなかった。ただ時間がないという理由だけである。(京大を受験する場合だったら全文訳は効果があるかもしれない。私の友人は問題文を全文訳して、それをWebで配布していた。その結果、彼は見事京大法学部に現役合格した。)
そういった理由から、単語集にもあまり取り組まなかった。一応いろいろな単語集をあたっては見たのだが、結局きっちり取り組めたのはDUO2.0だけだった。速読英単語(必修編)も一通りはやったのだがこれで単語の力がつくのかは疑問だし、そしてタイトルの通り速読ができるようになるかはもっと疑問である。別に文章を読んで単語を身につけるだけなら、日頃の長文問題からでも十分できるし、速読の練習も同じことである。
英作文に関しては、私の受験した大学で和文英訳は出題されないのであまり力は入れていなかった。英作文は授業のみである。それでも気をつけていたのは、「日本文を頭の中でイメージにしてみて、それを自然な英語で表現する」ことである。よく「和文和訳」とか言われているが、それは結局、最終目標となる英文が分かっている(あなたに英作文を教えている予備校の講師は、最初からその問題の答えを知っているのだ)からこそ、それに最も近い和文訳ができるのであって、はじめてみる問題ではそうたいした効果は発揮しないものだと私は考えている。「よい例文」を覚えて、それに近い形にもっていけばいいではないか、という人もいるかもしれないが、ではその形にもっていけなければどうなるのか。ともかく、私の場合は、頭の中のイメージを素直に英語に訳すだけであった。その際に初めて、「よい例文」というのも効果を発揮してくる。ちなみに私のその「よい例文」は、前述のDUO2.0や、即戦ゼミ3が参考になった。
教科書をやっている間は、学校指定の青チャートを理解することに努めた。青チャートができれば標準的な入試問題には対応できるであろう。ただ、私の受けた大学はそんなのとはかけ離れたレベルの問題を出してくるので、「まあ本番で解けるかどうかは運次第」といういい加減な気持ちでいた、あまり感心できるものではないが…。本番では、全6問中、1完4半だった。標準的な出来だと思う。標準的な問題を出してくる大学では、そのレベルの問題を確実に解けるようにしておく必要はあるが、超難問を出題する大学ならば、標準的な問題だけは解けるようにしておいて、難問には手を出さず、ほかの教科で勝負する、という風にしたほうがいいかもしれない(事実私はそうした)。それが物足りなくなったならば、「大学への数学」とかいった、難問に取り組む練習をすればいいはず。じっくり考えることにより、数学的思考力はグングン伸びるはずだ。まあ私はそこまで至らなかったのだが。
さっぱり分からなかった苦手科目。しかし何故かセンターでは153点という高得点を叩き出し、2次でも標準的な解答は作成できたと思う。国語の勉強は、センター対策はそれ専用の参考書(「きめる!センター」シリーズ)をこなした。2次対策は、予備校の夏期・冬期講習のみだ。しかし現代文なんか、自分の主観を交えずに素直に文章を読んで、あとは多少の表現力さえあればどうにかなるものだと思うのだが…。古文と漢文に関しては未だによく分からない状態である。ただ、学校の授業に真剣に取り組んでいれば、文法や単語は完璧になるはず。それが大きかったのかもしれない。
得意科目の一つ。化学はその中でも特に得意だと思っている。2次では多少失敗はしたものの、模試の結果などから、実力はあるものと考えている。さて、化学の勉強法であるが、「化学はイメージ」だと言いたい。どういうことかというと、理論しろ、無機にしろ、有機にしろ、原子・電子や分子の挙動をイメージすれば、すべてが理解しやすくなるのだ。例えば、何故水は凍ると体積が増えるかといえば、折れ線形の分子が正四面体方向に結合するからであり、何故折れ線形の分子になるかといえば、4つの電子対が互いに反発しあい、距離が最大になろうとするからである。なお、こういったミクロの視点から化学を考えるのには、「化学IB・IIの新研究(三省堂)」や、東大後期の過去問が適しているが、そうそう手に入るようなものではない。ともかく、こういった視点で物事を見ることができるようになると、「化学=暗記科目」という図式が音を立てて崩れるだろう。
問題演習に関しては、私は夏休みの間に、問題集(化学重要問題集2000)を一冊仕上げた。問題集を一冊仕上げると、自分の知識の足りないところも分かるし、問題を解く「コツ」みたいなものも少しずつ分かってくる。ぜひやろう。
私は化学に関しては「化学マスター」を自称していたくらいである(大学に入ってからは井の中の蛙だったと実感したが)。その実力はどこから来るものかというと、授業で得た知識の理解と、それを授業で扱うときの説明の仕方である。特に後者が重要。私の化学の先生は電子レベルまで突っ込んだ説明をしてくれたので非常に理解がしやすかった。もう一度言うが、「化学は暗記科目ではない」。
これもまた得意科目である。理由は簡単、2年のときに教科書が全部終わったため、3年次は授業の2周目が出来たからだ。その他にも、2年の時に宿題で標準的な問題集を丸々一冊仕上げさせられたことも大きい。私の場合これで基礎知識は完璧になったため、あとは問題を解くだけであった。しかし東大前期の場合は知識量をあまり多くは必要とせず、考察力を問う問題が多い。これに対応するためには予備校の講習が効果的かもしれない。私は主に代ゼミの東大生物の講座をとっていた。考察力なんか問題を解くことによってしか得られないだろう。あと東大の場合必要だったのは、短時間で文章を書く能力。考えていることを一発で文章にまとめる力と、文字を物理的に早く書く能力の両方が必要となる。後者はどうしようもないが、前者は日頃から文章を書くことを心がけていればある程度はどうにかなるかもしれない。私の場合はホームページの文章を書くということで鍛えられたのかもしれない。
センターだけの科目だったのでたいした対策はしていなかった。授業を聞いていただけである。他にしたことといえば、模試の見直しくらいだろうか。表のどういった部分に着目して、どのような知識と結びつければよいのかが模試などでつかめると思う。そのときに最大の集中力を発揮すればよい。ちなみにセンターの得点は83点である(少し自慢)。
小論文は生まれてから3回しか書いたことはない。1回目は大晦日の慶大プレ、2回目と3回目はともに慶大SFCの入学試験。小論文とは「何を考えているか」「それをどう表現するか」の双方を問う試験だと思っている。決して「自分の知識を披露する」試験ではないと思う。前者に関しては日頃からさまざまなことに関心を払っているかどうかが大切であるし、後者についてはどれだけ「理論的な」文章を書いたことがあるかということが大切であろう。(理論的でなくても、文章を書くこと自体は、書くことに対する自信をつけるかもしれない。私の場合は毎日つけていた日記がそうだった)一朝一夕の努力でどうにかなるというものではない。参考書や予備校で学べるのはせいぜい小手先のテクニックだけである。受験という視点でなく、生涯学習という視点で、文章を書く習慣をつけるのもよいだろう。
勉強の方法はこれくらいでよいとして、次に受験大学(あえて「志望校」とは書かない)の決定についての自分の体験を。
東京大学の理科二類を受験しようと決意したのは、高2の12月だった。そのとき、実にさまざまな要因が関係していた。
…と、私の場合はこういったものだが、受験大学の決め方など人それぞれである。身近な大人(親と先生以外。親と先生はやはり自分に直接関係してくるため、ネームバリューの高い大学を推奨してくるはずだから、素直なアドバイスは貰えない。もちろん,だからといって親や先生が自分のことを心配していないということにはならないが)・先輩・知人などにいろいろと話を聞いてみる。その上で、最終的に決定するのは、自分自身なのだ。
オープンキャンパスに関しては、私は行かなかったのだが、是非行くことをオススメしたい。(実は、私が行かなかったのは、気づいたときにはもう締め切りを過ぎていたからという理由である。締め切りで無かったならば新幹線に乗って上京する気もあった。)大学の日常の雰囲気は分からないが、キャンパスがどのような感じになっているか、教授や学生がどんな顔をしているか、そういったことは十分分かる。特に、建物を見てみると、高校との違いに驚く。「立派な建物だなあ」と(京大の場合、逆の意味でビックリする人もいるらしいが)。
オープンキャンパスよりもずっとオススメしたいのは、「モグリ」。先輩や友人のツテで、実際の授業に学生に扮して入り込むのだ。大学の授業は人によって評価が分かれるところだが、楽しい授業はすごく楽しい。そういった授業を見ると、大学の雰囲気もよく分かるし、なによりモチベーションが上がる。
あとは何を書いたらいいだろう…?期間ごとにやっていたことでも書いておこうか。
授業の予習復習が中心(というより、むしろそれしかやらなかった)。テスト勉強も欠かすことは無かった。いろいろな人の話を聞いていくうちに、東京大学受験を決意した。
受験勉強もそろそろ始めないと、という雰囲気も周囲には漂い始めるが、部活があるせいか、自分を含めてそういったことに取り組んでいる人は少ないようだった。授業の予習復習しかしなかったのはこの頃も同じ。ただ、電車の中で即ゼミを見るなど、移動中の学習を本格的に(これまでも多少はやっていた)始めた。
部活も引退したということで、とりあえずは「受験勉強でもするか」という気分にはなった。とりあえず、高3になってからたまっていた進研ゼミの教材をやることを、毎日の予習復習に加えてやった。
周囲は天王山だの勝負の夏だの騒ぎ立てていたが、相変わらず私はマイペース。1日の勉強時間は2時間〜9時間と幅広かった。やった内容は、学校の宿題と補習、予備校の夏期講習(大学別対策講座)、進研ゼミ(4月から貯めていた分)、化学重要問題集、くらいか。何かこの休みで伸ばしたい科目の問題集を一冊仕上げるといいかもしれない。
相変わらず授業の予習復習は欠かさない。それに加えて進研ゼミの教材や、夏期講習・模試を少しずつ見直した。結局やったことは6〜7月と変わらなかったかもしれない。この時期はほぼ毎週模試が入っていた。かなり疲れがたまった時期。
12月中旬頃からセンター対策を開始。ひたすらセンター型の問題を解いた。ただ、国語は苦手科目だったので、前述の「きめる!センター」シリーズに取り組んだ。化学は「早わかり 化学正誤問題」をやった。
このころになって初めて、様々な問題集に取り組み始める。進研ゼミに加えて、「生物合否決定問題26」「英語要旨大意問題演習」「慶應SFCの英語」や、大学の過去問(3年ほど)、東大模試の過去問をやった。1日の勉強時間は6時間くらいで安定していたと思う。さすがに直前期くらいは頑張らないと(笑)。
後期の過去問をちょっとやっただけだった。ドラクエ7の封印を開放したら、1日5〜6時間くらいやってしまった。
最後に、メンタル面で大切なことを書いて終わりにしたい。
偉そうに書きましたが、ほんと大したことはしてないんです。1年の頃からの授業の予習・復習と、多少の問題演習、それに集中力。これで東大にだって合格するんです。まあちょっとでも参考になったところがあったら吸収して欲しいと思います。しかし、後で読み返してみると、いかにも理系の人が書いた文章やね・・・(笑)